シーシェパードの創設者逮捕!日本はなぜ捕鯨にこだわるのか

海上保安庁が国際手配していた、シーシェパードの創設者、ポール・ワトソンさんがグリーンランドで逮捕され、日本に身柄が引き渡されることが決まりました。たびたび話題になるシーシェパードですが、彼らは何を目的とした団体なのでしょうか。

 

調査という名目の捕鯨

乱獲によって鯨の頭数が減少していたことから、1946年に設立された国際捕鯨委員会(IWC)が捕鯨を制限することになりました。日本は調査という名目で、南極海で捕鯨を行うこととなりました。

しかし、この調査とは名ばかりで、実態はただ食用の鯨を捕獲している不法行為であるとして、国際司法裁判所(ICJ)は日本に対して調査の停止を求めるという判決を下しました。

シー・シェパードはこういう日本の活動を批判し続けていて、日本の捕鯨船にボートを激突させるという過激な行為を繰り返しました。一方で、シーシェパード側も日本人に銃で撃たれたという反論をしています。

下の動画はポール・ワトソンさんが出演したフランスのテレビ番組で、21:30~から日本の船から発砲する映像があります。

ICJの判決を受け、日本は2019年にIWCを脱退。調査名目ではなく、商業としての捕鯨を開始しました。

国際ルールを完全に無視して好き勝手やり始めたかといわれれば、必ずしもそういうわけではありません。調査捕鯨をおこなっていた南極海ではなく、日本の領海と排他的経済水域(EEZ)内のみ捕鯨を行っていますし、生息数が十分に確認されているミンククジラ、ニタリクジラ、イワシクジラを対象にすることを定めています。

日本も、国際的な理解を得ようという努力をしているのだと思います。

 

念願の商業捕鯨だったはずが

ところで、皆さんは鯨肉を食べていらっしゃいますでしょうか。

捕鯨が盛んだった1960年代までは、日本の食肉供給量で、クジラは牛、豚、鶏を上回っていました。給食でも鯨肉は提供されていましたし、ベーコンといえば豚ではなく鯨という方も多いと思います。しかし、現在ではスーパーで鯨肉を見かけることはなかなかありません。

2019年以前の調査捕鯨時代に捕獲されていた鯨肉は毎年2500tほどでした。しかし、調査捕鯨を止め、水産業者が日本のEEZ内で自由に捕鯨をするようになると、1500~1600tほどと大幅に減少したのです。

IWCから脱退し自由に捕鯨ができるようになったはずなのに、なぜ捕獲量が減ってしまったのでしょうか。

 

税金頼みだった調査捕鯨

調査捕鯨時代、水産庁が委託する日本鯨類研究所という財団法人から50億超の予算が投入されていました。鯨食文化を守るためという名目です。水産業者は国から委託されて捕鯨を行っていたわけですから、南極海まで航海するには巨額の支出が必要不可欠ですが赤字になることはありませんでした。

2019年から商業捕鯨が始まると、国が水産業者に捕鯨を依頼しなくなる代わりに、捕鯨をする業者を支援するというための「実証事業支援」とい補助金を支給する形に改めました。2023年度の実証事業支援は17億1000万円ほどです。

つまり、税金が投入されなくなると捕鯨を諦めてしまう水産業者が多く、極端に捕獲量が減ってしまったというわけです。

 

円滑化実証等事業(2023年度)

沿岸海域実証事業      3億6000万円

沖合海域実証事業      3億5000万円

母船式捕鯨業の基金事業      10億円

計             17億1000万円

 

沿岸、沖合というのは陸からの距離の違いです。沿岸は陸が見える程度の海域で、沖合は陸から200海里(約370km)までの地域、つまり排他的経済水域内です。

母船というのは、船上で鯨の保存作業ができるほどの大きさがある船です。その母船を運用するための補助金にも税金が使われています。

大型の船なので、維持費だけでも年間7億ほどかかるのだそうです。そんな母船は2024年3月、73年ぶりに「関鯨丸」という捕鯨母船が竣工されました。

そんな関鯨丸がシー・シェパードのターゲットになっていました。

73年ぶりに竣工された関鯨丸
(出典)くじらタウン

 

ポール・ワトソンが問題視した関鯨丸

今回、海上保安庁がデンマークにポール・ワトソンさんの身柄の引き渡しを要求しているのは、2010年に南極海で日本の調査捕鯨船団の航行を妨害した事件の共犯という容疑によるものです。関鯨丸の操業を妨害するため、グリーンランドの中心都市、ヌークへ立ち寄ったところを地元警察によって拘束されました。

この関鯨丸は、鯨の中ではシロナガスクジラに次いで大きいナガスクジラを捕獲するために設計されており、数が減少していたことから長く捕獲していなかった種で、シーシェパードが特に問題視してたようなのです。

そして今月1日、関鯨丸がナガスクジラの捕獲をしたという発表がありました。48年ぶりということです。

www3.nhk.or.jp

 

利権が絡む捕鯨問題

捕鯨について日本人は比較的肯定的な意見が多いのではないでしょうか。西洋人もウサギを食べているだとか、捕鯨は日本の古来からの食文化だ、といった意見をよく見かける気がします。

実際は国民もそこまで好んでいないのに、鯨食文化を守るという大義名分の下、税金で捕鯨を行っているのも現実です。国民感情に訴えかけていて、実はそんなに食べられていない鯨肉には、水産庁の利権が根底にあるのではないでしょうか。